2018年4月 2日

僕たちがやりました、その叫びの裏には

僕たちがやりました

ある日、偶然にiBooksで第1巻を試しに読んでみたら止まらなくなって、勢いで9巻まで一気に全部読んちゃった、そんな魔力のある作品である。読み終わってからだいぶ時間が経った今でも、まだ妙に心がディスターブされ続けている。ちょっと暗いテーマにはいつも惹かれるが、本作には上位に乱されている。素晴らしい。

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最初の数ページで、どうしよもない主人公たちのどうしようもない日常を見て、この作品は一体何を伝えたいのだろうと思いきや、まさかのいたずらが大事件になって、そこからプロットが「爆発的に」邁進する。

犯罪を犯してしまった。人を殺してしまった。その後どうする?よくあるパターンは自己正当化なり、現実逃避なりして、最終的に耐えきれず自首するか、あるいはそこを「乗り越えて」サイコパスになるか、という流れが考えられる。『罪と罰』、この名作も極めてシンプルに要約すると上の範疇に入る。

しかし『僕たちがやりました』ではプロットがよっぽど複雑でよっぽど面白い(中毒性がある)。主に二つの点で差別化できている。

・単独犯ではなく、4人の集団
・訳あって自首する術がない

三人の中学生と一人のニートで金持ちのOB(通称パイセン)、彼らが不本意で犯罪を犯した後の心理の変化はもちろん、その波動で集団の関係にも大きな壁ができてしまう。かつては一緒にバカけた友人が、明日には用心深く警戒しないといけない闇の使徒になる。無言無声で滑稽な笑顔さえ伴う戦争ごっこ。

この絶妙な多角の博戯関係が作品のバックボーンであり、各人が葛藤の末、どんな道を選んだのかも吟味するところである。

そして何よりも別格なのは「自首できない局面」を作り上げたこと。このひねりを通して表現した矛盾が本作の醍醐味だと思う。「僕たちがやりました」、題名通りのその叫びはどこまでもなく辛くて、かつどうしよもない。なぜこうなったのかは是非ご自分で読んでください。

法律は人を裁くのではなく、人を救うために存在するのだ。

どこで聞いたのかは忘れたが、最後まで読んでなぜかこの言葉が浮かんだ。罪を償えないままそれと生きていくのがどんだけ辛いのか。幸せになっているはずなのに、幸せと感じている最中なのになぜかへとが出る。人間はそんなダークなものを背負って生きていけるような生き物ではないじゃないかな。


他の登場人物も見事に仕上げた。心の強い蓮子と彼女の叶わない恋、内話を明かした市橋のまさかの最後、真実にたどり着いた刑事が四人にかけた呪い、などなど。

最初は過激な描写や画風に戸惑ったのだが、やがて腑に落ちた。メイクセンス。人間の見苦しさ、無様な姿をとことん表現するにはぴったりだ。

一つだけ印象に残るセリフをあげるとしたら…主人公がドン底に落ちて、生きる意味も分からず、ゴミ箱の中の残飯を口に運びながら吐いたこの言葉でしょうか:

お願いします神さま…どうか今日が、人生最悪の日でありますように


ちなみにNetflixに実写版のドラマがあって、テーマソングが最近流行っていたShape of Youとなっている。おかげでこの曲を聴く度に胸がいっぱいになる。感情輸入しすぎたか。

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Qihuan Piao

朴 起煥

東京で働いている「外人歴」9年のソフトウェア「ライター」。いつの間にか納豆が食えるようになり、これで日本に慣れきったと思いきやまだまだ驚きが続いてる。読んだり書いたりするのが好きで、自身の経験や本から得た「何か」をここに書き出してる。最近古本屋にハマってる。

他にも英語中国語で書いてます、よろしければチェックしてみてください。