2017年9月17日

惹かれた電車の広告3つ

電車の中の数多な広告の中で、宝物探しのように自分にささるものを意識的に集め始めている。収穫数はなかなか伸びないが、厳選した3つをひとまず紹介したいと思う。

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「条件は今よりいい会社。以上。」

DODAのこの転職広告を初めて見たときは素直にグッドジョブだと思った。数ある転職会社の広告の中で、ずば抜けてユーザー目線ではないだろうか。

キャリアアップもいいけど、
給料とか、プライベートとか、
大切だから。
条件は今よりいい会社。
以上。

結局のところ、これが一番シンプルで、みんなが結果として求めていることとじゃないかな?

今後のキャリアパス、情熱でやり遂げたいこと、そんな真面目で勤勉な人はいるにはいるが、ほとんどの人(特に就職したばかりの20代前半)はまだ自分のことをよく理解していないかもしれないし、難しいことを提示してもうまく回答できないかもしれない。

その中でせめてもの、譲りたくないものをこの広告は掴み、うまくキャッチフレーズにできたと思う。なかなか良い。

「いい成績ほど、母には内緒にしてた」

いい成績とったら真っ先に親に教えて、ご褒美をもらおうとしていた学生時代の私である。この通常の思考ルートと逆行する「ギャップ」がすごい。続きが気になって仕方がない。次の展開が知りたくなる。

ちなみに全文は以下となる

いい成績ほど、母には内緒にしてた

テストで満点なんかとったら、
母はきっと喜ぶだろう。

だけど、
それが母を苦しめることを、
私は知っている。

でもね、
交通事故で父を亡くして
進学をあきらめようとしてたのは、
私の方だった。

~交通遺児育英会の中吊り広告より~

『ワンランク上の〇〇』

当初(数年前かな)初めてこの言葉に出会ったときは、賢い!と衝撃を受けた。ただその高い汎用性と移植性によって、もはや街中に濫用されているクリシェとなってしまっているが… 本当に残念。

ワンランク上の旅
ワンランク上のホテル
ワンランク上の〇〇

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ワンランク上のサービスを享受するには、当然さらにお金を要するもので、それが商売の狙いでもある。極めてシンプル理屈なのに、万人に共通するある「属性」を賢く、巧妙に包んでいる。それは「ランク」の言葉自体にひもづく「階級感」だと私は思う。

「社会的階級」を登る辛さ、必要とされる才能と運気、これらを全て置き去り、「ワンランク上」のサービスを平等に味わうことができる、そう思わせてしまう。あたかもそのランクに自分は君臨したように、潜在意識への報酬と心理的満足度を最大限に強調し、要する代価(さらなる金銭)を最小限——無に等しい——に抑えた効果があると感じた。


車内広告のみならず、あらゆる商用ポスター広告による視覚への暴力は避けようがないが、その分、クリエーティブなものに出会った時の反動も大きい。それらは読み手に清新な風を吹き込んでくれるから、しばし宝探し続けそう。

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Qihuan Piao

朴 起煥

東京で働いている「外人歴」9年のソフトウェア「ライター」。いつの間にか納豆が食えるようになり、これで日本に慣れきったと思いきやまだまだ驚きが続いてる。読んだり書いたりするのが好きで、自身の経験や本から得た「何か」をここに書き出してる。最近古本屋にハマってる。

他にも英語中国語で書いてます、よろしければチェックしてみてください。